【この記事でわかること】
SNS運用やマーケティングをはじめとしたコンサルティング企業としてさまざまな企業を支援してきたAffectoryが、自ら(グループ企業として)福岡空港で寿司店「ニシムラ鮨」を開業しました。売上は想定の2倍近くになりましたが、想定していない問題も当然起こります。「支援する側」と「経営する側」では、見えるものも感じる恐怖もまるで違います。経営現場の現実を正直にお伝えするとともに、本当に価値あるものをどうやって見つければ良いのか、気づきを共有します。
【執筆】株式会社Affectory 取締役 堀池 広樹
(中小企業向けDX支援・SNS運用・映像制作・新規事業コンサルティング/affectory.co.jp)
コンサルティング企業が飲食店を開いた3つの理由
そもそも、なぜ飲食店を開いたのか。
地方に眠る企業には、非常に大きな可能性があると我々は感じています。そのため、魅力的な企業の発掘・M&Aなども積極的に行っており、今回の飲食事業もその一つです。
「コンサルが飲食店を開いた」と聞くと、数字をガチガチに固めてから動いたように思われるかもしれません。実際は違います。「根拠はないけど確信があった」というのが正直なところです。
確信の根拠は3つありました。
まず、日本が世界で勝負できる数少ないものの一つが「食」であり、飲食事業をやりたいという気持ちがあったこと。
次に、シェフの腕が間違いなく良いこと。「ミシュランガイド福岡・佐賀・長崎2019」にてフュージョン部門で日本人唯一の一つ星を獲得した西村貴仁(にしむら たかひと)シェフとタッグを組む。必ずお客様に美味しいと言ってもらい、新しい体験を提供できると確信していました。
そして決め手は立地です。福岡空港で60〜70年続いた寿司屋2店舗が同時に閉店し、その跡地に入れるという話が来ました。もともと寿司で集客できていた場所に、腕のいいシェフを置けば「美味しいものを多くの人が通る場所に出せて、(少なくとも1度は)食べてもらえるんだから、絶対に流行る」という判断でした。
ただ、同じ場所で出店していた飲食店が相次いで撤退したり、新規出店しても1人もユーザーがつかないという状況も目の当たりにしました。「商品力」×「マーケティング」のどちらかが欠ければ失敗するという事業運営の法則はどの業態でも例外ではありません。
事業計画で最も外れたのは「人材」
売上の面では想定を大きく越えて2倍近くになっており、むしろここまでうまくいったことには驚いています。AffectoryではSNS運用やマーケティング面で優秀な人材とノウハウを抱えており、BtoCの飲食店という業態と相性が良かったことも幸いしました。
しかし、逆に最も苦戦し、今も難しさを抱えているのは「人の確保」でした。
開業前の計画では、ここまで人が必要だとは想定しておらず、スタッフに過大な負担をかけることになりました。初日から朝6時に集合し深夜1時まで作業、翌日も同様です。開業2日目にはもう「人がもっと必要だ」と気づいていました。今は従業員の皆さんの頑張りに加え、人材確保も少しずつ進めていますが、まだまだ人手が足りない状況です。
飲食店の開業を検討されている方にお伝えしたいのは、「人員計画は自分の想定の1.5倍で見積もるべきだ」ということです。足りない状態で始めると、スタッフの離職を招き、さらに人が足りなくなるという悪循環に陥ります。人員を増やして回らない事業であれば、開業前の時点でリスクが非常に大きいということを意識しておく必要があります。
経営しているからこそ変わったコンサルティングの言葉
この経験を経て、コンサルタントとしてのアドバイスも明確に変わりました。
以前は「こうすべきです」と言えていたことが、今は「自分もこうやって痛い目に遭いました」と言えるようになりました。お客様にとって、正論よりも「同じ痛みを知っている人の言葉」のほうが響きます。コンサルティング企業で自社サービスをローンチしているところはありますが、支援させていただいているお客様の業態を実際に痛みをもって体験しているコンサルティング企業はほとんど無いと思います。
特に飲食業の経営者に対しては、売上やマーケティングの話と同じくらい、抱えている人材や今後採りたい人材についての問題を話すようにしています。売上以前の問題が山積みであることを、身をもって知ったからです。
令和の中小企業が発揮するべき、本当の価値とは
人口減少にともない、中小企業は今後も働き手不足と客不足に悩まされることになります。働く場所としてもサービスを提供する企業としても差別化が難しい時代に、差別化できるのは「意味」だと私たちは考えています。ここで働くことに「意味」があるのか。この商品を使うことで「意味」を見出せるのか。それが最も大きな差別化になります。
SNSやAIで情報の流れが速くなり、「バズ」の概念が生まれ、本当に価値があるものは何なのかユーザーも判断できなくなっても、長い目で見て利益を生み出すのは「バズ」ではなく「商品」です。SNS運用やマーケティングのノウハウによってユーザーに知ってもらうことはできますが、商品の力が弱ければユーザーはすぐに離れてしまいます。
移り変わりが激しすぎる時代だからこそ、移り変わらないファンを獲得することこそが、この時代に勝てる経営スタイルなのです。
経営しながらマーケティングや組織の課題を感じている方は、同じ立場で経営しているコンサルタントに相談することで、机上の空論ではない実践的な助言を得られます。Affectoryでは飲食店に限らずさまざまな業態の企業をM&Aを通じて経営しており、経営の実体験をベースにした支援を行っています。
よくある質問
Q. コンサルタントが飲食店を開業するメリットは何ですか?
A. 最大のメリットは、お客様と同じ目線で経営課題を語れることです。支援する側の知識と、経営する側の実感の両方を持つことで、机上の空論ではない実践的なアドバイスが可能になります。
Q. 飲食店の開業で最も想定外だったことは何ですか?
A. 人材確保の難しさです。売上は想定の2倍近くを達成しましたが、必要な人員数を大きく見誤り、スタッフに過大な負担をかけました。開業2日目には人手不足を痛感しています。
Q. 飲食店の事業計画で人員計画はどう見積もるべきですか?
A. 自分の想定の1.5倍で見積もることを推奨します。特に開業直後は想定外のオペレーションが発生しやすく、余裕のない人員配置はスタッフの離職を招く悪循環につながります。
Q. 「支援する側」と「経営する側」の最大の違いは何ですか?
A. 「失敗の恐怖」の質が決定的に違います。コンサルは「集客が難しい」と言えますが、経営者は自分の店が空いている状態を目の当たりにする恐怖と向き合います。この恐怖は経営してみないとわかりません。
Q. 飲食店の開業を検討していますが、コンサルに相談すべきですか?
A. 相談すべきですが、「自分でも事業を経営しているコンサル」を選ぶことを強くお勧めします。飲食業の現場を知らないコンサルの提案は、現場の体力や人員の実態を無視した机上の計画になりがちです。