【この記事でわかること】
飲食店の現場では、注文・予約・在庫・人員配置といった日々のオペレーションが少しずつ重なり、気づけば「忙しいのに利益が残らない」状態に陥りがちです。本記事では、あるレストランがオペレーション上の悩みをどう特定し、運営の改善と集客(マーケティング)の両面でどう取り組み、これから何を目指していくのかを現場目線でお伝えします。
【執筆】株式会社Affectory 取締役 堀池 広樹
(中小企業向けDX支援・SNS運用・映像制作・新規事業コンサルティング/affectory.co.jp)
1. オペレーションで困っていたこと
具体的に行き詰まっていたのは、次のような点でした。
- 予約・顧客情報がバラバラだった:電話・SNS・予約サイトと窓口が分散し、当日まで来店人数が読めない
- 仕込み・在庫の判断が“勘”頼り:食材ロスと欠品が両方起きていた
- 人によって業務品質が変わる:オペレーションが属人化し、新人が育つまで時間がかかる
- “知ってもらう”手段が手探りだった:味には自信があっても、その魅力を外に届ける打ち手が定まっていなかった
- 数字を振り返る余裕がない:日々回すだけで精一杯で、何が利益を圧迫しているか把握できていなかった
いずれも「料理人の本業=食の価値づくり」に集中するための時間が、運営作業に奪われている状態でした。とりわけ、技術やノウハウが一部の人に集中する”属人化”は、人材育成に時間がかかり、人手不足や新規出店の足かせにもなっていました。
2. どう改善したか― オペレーションとマーケティングの両輪
改善は、「足元を固める(オペレーション)」と「打ち出す(マーケティング)」を両輪で進めたことがポイントです。
① オペレーションの改善 ― まず“見える化”から
- 業務の棚卸し
1日の作業を洗い出し、「誰が・何に・どれだけ時間を使っているか」を可視化。改善の出発点として、現状をありのままに把握しました。 - 情報の一元化
予約・顧客情報、仕込みや在庫の情報を一か所に集約。当日の人員配置や仕込み量を前もって判断でき、現場の「読めなさ」を減らしました。 - オペレーションの再現性の向上
個人のスキルに依存せず、誰でも同じ品質で再現できる「レシピ」を作成。味やサービスのばらつきをなくし、店として安定した品質を出せる土台をつくりました。 - 人材教育の仕組み化
従来の「修行」という属人的な形ではなく、ノウハウをしっかり言語化し、誰でも必要な情報にアクセスできる環境を構築。教わる人・教える人の負担を減らしました。これにより、人材教育のスピードを向上させ、人材不足が起きにくい組織構造の実現を目指しています。「仕組みで人を育てる」ことが、忙しい現場を支える基盤になりました。
これにより、人材教育のスピードを向上させ、人材不足が起きにくい組織構造の実現を目指しています。「仕組みで人を育てる」ことが、忙しい現場を支える基盤になりました。
② マーケティングの支援 ― 価値を“届く形”にする
足元が固まったことで生まれた余力を、店の魅力を伝える活動に振り向けました。
- コンセプトと強みの言語化:何が他店と違うのか、誰に向けた店なのかを整理し、発信の軸を定めた
- SNS・予約導線の整備:認知から来店までの流れを設計し、見つけてもらい・予約してもらえる導線をつくった
- データに基づく改善:来店データや反応を見ながら、打ち出し方を継続的に調整した
改善のポイント
- 一気に全部を変えず、効果の大きいところから1つずつ着手した
- ツールや発信を目的化せず、「現場の手が空く」「店の魅力が正しく伝わる」ことをゴールに据えた
- オペレーションとマーケティングを切り離さず両輪で回したことで、相乗効果が生まれた
3. 成果 ― 空港出店で、23席・月商1,750万円
両輪の取り組みが実を結んだのが、空港への出店でした。
- 限られたわずか23席という規模ながら、月商1,750万円を達成
- 好立地のポテンシャルを、安定したオペレーションと伝わるマーケティングが下支え
- 再現性のある仕組みを整えていたからこそ、限られた人員でも新しい立地で同じ品質を提供でき、出店に踏み切れた
- 「席数が少ない=売上の上限が低い」という常識を、回転・単価・体験価値の設計で塗り替えた
4. これから何をしていきたいか
成果を一過性で終わらせず、次のステージを見据えています。
- 来店データを活かした、一人ひとりに合わせたおもてなしの強化
- 現場の余力を、新メニュー・新しい食体験の開発に再投資
- 言語化したノウハウを土台に、人材育成のスピードをさらに高め、人手不足に左右されない組織へ
- 整えた仕組みを横展開し、複数店舗・新たな立地でも品質と成果を再現できる体制づくり
オペレーション改善も集客も、ゴールではなく「本当にやりたいことに集中するための土台」だと考えています。人を”仕組みで育てられる”ようになったことが、次の挑戦を支えています。
本記事は、取材にご快諾いただいたお店のご協力のもと制作しました。改めて御礼申し上げます。
- 店舗名・ブランド:「ニシムラ鮨」(福岡空港 国内線ターミナル 3F )ほか各系列店
- 特徴・こだわり:ミシュランガイド一つ星獲得店を率いた西村貴仁が挑む、新しい鮨体験。本格鮨がセット1,400円台から食べられます。
- 公式サイト:https://gastromix.co.jp/
- 公式SNS:https://www.instagram.com/nishimura_sushi_fukuoka/